線形代数

線形代数とは?




1. 線形代数の概要


線形代数(Linear Algebra)は、ベクトルや行列を用いた数学の分野であり、 データ解析、機械学習、物理学、コンピュータグラフィックス など、幅広い分野で活用されています。

線形代数は、次のような概念を中心に扱います。

  • ベクトル(向きと大きさを持つ量)
  • 行列(数値を格子状に配置したもの)
  • 線形写像(ベクトル空間の変換)
  • 固有値・固有ベクトル(行列の特性を示す指標)

この知識を活用すると、回帰分析やニューラルネットワーク などの機械学習モデルの理解が深まります。




2. 線形代数の基本的な公式


(1) ベクトルの内積

 \mathbf{a} \cdot \mathbf{b} = a_1b_1 + a_2b_2 + \dots + a_n b_n

内積は、2つのベクトルの相関や角度を計算する際に用いられます。


(2) 行列の積

 C = AB の場合、行列  A  B の積は、次のように計算されます。

 C_{ij} = \sum_{k} A_{ik} B_{kj}

行列の積は、変換やデータ処理に頻繁に用いられます。


(3) 行列の逆行列

逆行列  A^{-1} は、次の関係を満たします。

 A A^{-1} = I

ここで  I は単位行列です。



3. 線形代数の応用


(1) 機械学習における応用

  • 回帰分析(線形回帰・重回帰分析)
  • 主成分分析(PCA)(データの次元削減)
  • ニューラルネットワーク(行列演算を活用)

(2) 物理学・エンジニアリングにおける応用

  • 力学シミュレーション(ベクトル演算)
  • 電磁気学(行列を使った場の解析)

(3) コンピュータグラフィックス(CG)

  • 3D変換(拡大・回転・移動)
  • 光の反射や陰影の計算


4. 線形代数まとめ


  • 線形代数は、ベクトルや行列を用いた数学であり、多くの分野で活用されている。
  • 機械学習やデータ解析において、基礎となる概念を提供する。
  • 具体的な応用として、回帰分析、PCA、ニューラルネットワーク などがある。




5. 転置行列・単位行列・逆行列


転置行列(Transpose)

行列 AA の転置とは、行と列を入れ替えた行列のことを指します。
例えば、行列 AA が以下のような場合:

 A = \begin{bmatrix} a & b \ c & d \end{bmatrix}

その転置行列 ATA^T は、

 A^T = \begin{bmatrix} a & c \ b & d \end{bmatrix}

となります。転置は、内積計算や対称行列の性質を利用する際に重要になります。

単位行列(Identity Matrix)

単位行列とは、対角成分がすべて1で、それ以外の成分が0である正方行列です。
例えば、3×3の単位行列は以下のようになります:

 I = \begin{bmatrix} 1 & 0 & 0 \ 0 & 1 & 0 \ 0 & 0 & 1 \end{bmatrix}

単位行列は、行列の積において乗法単位元の役割を果たし、どんな行列 AA に対しても、

 A I = A

となります。

逆行列(Inverse Matrix)

逆行列とは、ある行列 AA に対して、別の行列 A−1A^{-1} を掛けたときに単位行列 II となる行列のことを指します。

 A A^{-1} = I

例えば、2×2行列の逆行列は以下のように計算できます:

 A = \begin{bmatrix} a & b \ c & d \end{bmatrix}

の逆行列は、

 A^{-1} = \frac{1}{ad - bc} \begin{bmatrix} d & -b \ -c & a \end{bmatrix}

ただし、行列の行列式(determinant)  \det(A) = ad - bc が0でない場合に限ります。

ベクトルで微分

ベクトル・行列を用いた微分では、スカラー関数  f(x) をベクトル  x に対して微分する操作がよく用いられます。例えば、

 \frac{d}{dx} (x^T A x)

のような式の微分を求める際、線形代数の知識が必要です。
具体的には、 f(x) = x^T A x の場合、微分は

 \frac{d}{dx} (x^T A x) = (A + A^T)x

となります。特に  A が対称行列の場合、結果は  2Ax となります。


重回帰分析でこれらが必要な理由

重回帰分析では、複数の説明変数  X を用いて目的変数  Y を予測するため、行列計算が必要になります。
最小二乗法による回帰係数の求め方は以下のようになります:

 \hat{\beta} = (X^T X)^{-1} X^T Y

ここで、各線形代数の概念がどのように関係するか説明します。

  1. 転置行列
    •  X^T は設計行列  X の転置行列であり、回帰係数の計算時に必要。
    • 内積計算や共分散行列の計算に使われる。
  2. 単位行列
    • 逆行列を求める際に、単位行列を用いることがある。
    • 正則化(リッジ回帰など)を行う際に、単位行列を追加して安定化を図ることがある:

 \hat{\beta} = (X^T X + \lambda I)^{-1} X^T Y

逆行列

  •  (X^T X)^{-1} の計算によって、最小二乗法の解が得られる。
  • 逆行列が存在しない場合(行列が特異である場合)は、擬似逆行列を使う。

ベクトルで微分

  • 最小二乗法では、誤差関数を微分して最適解を求めるため、行列微分の知識が必要。
  • 誤差関数  L(\beta) = || Y - X\beta ||^2 を最小化するために、

 \frac{d}{d\beta} L(\beta) = -2X^T (Y - X\beta) = 0

となり、回帰係数の公式が導かれる。


6.転置・行列 まとめ

  • 転置行列 は回帰係数の計算や内積に利用。
  • 単位行列 はリッジ回帰などの正則化に利用。
  • 逆行列 は最小二乗法の解を求めるために必要。
  • ベクトルの微分 は最適化問題を解く際に必要。


7. 関連ページ


線形代数を基盤とする回帰分析の詳細については、以下のページをご覧ください。