数学的な基礎知識

数学的な基礎知識


機械学習やディープラーニングを仕事にするうえで必須となる数学的な基礎知識を、基礎的なものから応用的なものまでをカテゴリごとに整理しました。それぞれの知識について、必須である理由も簡単に説明します。


1. 基礎的な数学知識(全般に必要なもの)

(1) 線形代数

  • 必須項目:
    • ベクトルと行列の基本(加減算、スカラー積、内積)
    • 行列積(ドット積)
    • 逆行列と行列式
    • 固有値・固有ベクトル
    • 特異値分解(SVD)
    • 線形変換の概念
  • 理由:
    • 機械学習アルゴリズムやディープラーニングの基礎は、線形代数に基づいています。
      • 例: ニューラルネットワークの重み更新や特徴量の変換は行列演算で記述される。
    • PCA(主成分分析)やSVDなどの次元削減手法、勾配計算などに必須。

(2) 微分積分

  • 必須項目:
    • 基本的な微分と積分(関数の変化を表現)
    • 多変数微分(偏微分)
    • 勾配とヤコビアン
    • 連鎖律(チェーンルール)
    • 最適化問題(局所・大域最適解)
  • 理由:
    • 機械学習のモデル学習は「損失関数を最小化する」プロセスであり、勾配降下法などの最適化手法を用いるため微分が重要。
    • ニューラルネットワークのバックプロパゲーションは、連鎖律を使った多変数微分の応用例。

(3) 確率・統計

  • 必須項目:
    • 確率の基本(確率分布、条件付き確率、ベイズの定理)
    • 確率分布(正規分布、ベルヌーイ分布、ポアソン分布など)
    • 母数・統計量(平均、分散、標準偏差、共分散)
    • 仮説検定とp値
    • 最大尤度推定(MLE)
    • 標本分布と中央極限定理
  • 理由:
    • 機械学習モデルの多くは確率的手法に基づいており、モデルの予測や評価には確率分布や統計的指標が欠かせません。
      • 例: ロジスティック回帰はベルヌーイ分布を前提とした確率モデル。
    • ベイズ推定や統計的検定など、データ分析やモデル評価に使われる。

2. 応用的な数学知識(特定技術で必要になるもの)

(1) 最適化理論

  • 必須項目:
    • 勾配降下法とその派生(確率的勾配降下法、Adamなど)
    • 凸最適化の基礎(凸関数、ラグランジュ乗数)
    • 制約付き最適化
  • 理由:
    • モデルの学習は最適化問題を解くプロセスそのものであり、勾配降下法やその発展形は機械学習で頻繁に使用される。
    • ラグランジュ乗数は、サポートベクターマシン(SVM)などで使われる。

(2) 情報理論

  • 必須項目:
    • エントロピーと情報量
    • 相対エントロピー(KLダイバージェンス)
    • 交差エントロピー
  • 理由:
    • 情報理論は、損失関数やモデル評価に利用されます。
      • 例: 交差エントロピーは、分類タスクで用いられる主要な損失関数。

(3) フーリエ解析と信号処理

  • 必須項目:
    • フーリエ変換、離散フーリエ変換(DFT)
    • 畳み込み演算
    • ウェーブレット変換
  • 理由:
    • 音声や画像のデータ前処理、特徴抽出に重要。
      • 例: CNN(畳み込みニューラルネットワーク)で使われる畳み込み演算の基礎。

(4) グラフ理論

  • 必須項目:
    • グラフの基本(ノード、エッジ、隣接行列)
    • グラフアルゴリズム(最短経路、最大流問題)
    • グラフ構造データの解析
  • 理由:
    • ソーシャルネットワークや分子構造解析など、グラフベースのデータに対する学習に必要。
      • 例: グラフニューラルネットワーク(GNN)の構築に使われる。

3. 特定分野での応用数学

(1) 時系列解析

  • 必須項目:
    • 自己回帰モデル(AR)、移動平均モデル(MA)
    • 自己相関と偏自己相関
    • フーリエ解析とウェーブレット変換
  • 理由:
    • 時系列データ(例: 株価、気象データ、IoTデータ)を扱う際に重要。

(2) 幾何学と距離計算

  • 必須項目:
    • 距離の定義(ユークリッド距離、コサイン類似度、マンハッタン距離)
    • 幾何空間でのデータ表現
  • 理由:
    • クラスタリングや最近傍探索など、距離に基づくアルゴリズムに必要。

(3) カルマンフィルタと動的システム

  • 必須項目:
    • 状態空間モデル
    • フィルタリングと予測
  • 理由:
    • センサー処理や制御システム、ロボティクスなどで使用。

4. 仕事の種類別に必要な数学の例

仕事の種類必須の数学知識主な理由
データ分析・データサイエンティスト確率統計、線形代数、時系列解析データの前処理やモデル構築
データの傾向や相関の把握のため
機械学習エンジニア微分積分、最適化理論、情報理論モデルの設計・学習プロセスの
最適化に重要
ディープラーニングエンジニア線形代数、微分積分、フーリエ解析ニューラルネットワーク学習や
信号処理に必要
ロボティクスエンジニアカルマンフィルタ、最適化理論センサーからのデータ処理や
動的システムの制御に使用
NLP(自然言語処理)専門家確率統計、情報理論テキストデータの処理や
モデルの評価
画像処理エンジニアフーリエ解析、線形代数、幾何学画像データの特徴抽出
CNNの設計に重要

5. まとめ

機械学習やディープラーニングを仕事にする上で、数学的な基礎知識は土台となるものです。特に線形代数、微分積分、確率統計は全般に必要なスキルとして習得すべきです。さらに応用分野や専門性に応じて、最適化理論やフーリエ解析などの分野に進むことで、特定の仕事におけるニーズを満たせるようになります。


それぞれの記事(作成予定)

  1. 基礎知識全般
  2. 応用数学(技術別)
  3. 仕事の種類別に必要な知識