単位行列とは
単位行列(Identity Matrix)とは、対角成分がすべて 1 で、それ以外が 0 である正方行列のことを指します。
これは、スカラーの「1」に相当し、任意の行列
に対して以下の関係が成り立ちます。
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例えば、次のような形の行列です:
![](https://lets-programing.com/wp-content/uploads/2025/01/image-127.png)
単位行列の応用
単位行列は、以下のような場面で利用されます。
- 行列の乗算の単位元として機能(スカラーの “1” に相当)
- 逆行列を求める際の基準(ガウス・ジョルダン法などで利用)
- リッジ回帰などの正則化手法
例えば、回帰分析で正則化を行う場合、単位行列を加えることで計算の安定性を向上させる:
行列の積と単位行列
例えば、次のような行列 A があるとします。
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このとき、行列積を計算すると、
![](https://lets-programing.com/wp-content/uploads/2025/01/image-126.png)
したがって、単位行列を掛けても元の行列 AA が変わらないことが確認できます。
逆行列とは?
逆行列(Inverse Matrix)とは、ある行列 AA に対して、以下の関係を満たす行列 A−1A^{-1} のことを指します。
これは、スカラーにおける逆数(例えば 2 × 12\frac{1}{2} = 1 )に相当する概念です。
逆行列の求め方(2×2行列)
2×2行列の逆行列は、行列の 行列式(determinant) を用いて次のように計算できます。
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このとき、逆行列 A−1A^{-1} は
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ただし、行列式 det(A)=ad−bc\det(A) = ad – bc が 0 でない場合に限ります。
2×2行列の逆行列計算
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行列式(determinant)を計算すると、
したがって、逆行列 A−1A^{-1} は、
このようにして、逆行列を求めることができます。
逆行列が存在しない場合
- 行列が 特異行列(Singular Matrix) である場合、つまり 行列式が 0 の場合、逆行列は存在しません。
- そのような場合、擬似逆行列(Moore-Penrose Pseudoinverse) を使って近似的に逆行列を求めます。
まとめ
- 単位行列 II は、行列の「1」に相当し、行列を変えずに掛け算ができる。
- 逆行列 A−1A^{-1} は、行列の「逆数」に相当し、掛けると単位行列になる。
- 逆行列は、行列式が 0 でないときにのみ求めることができる。
- 特異行列の場合、擬似逆行列を用いることがある。