クラウドコンピューティング定義
(NIST SP 800-145より)
クラウドコンピューティングは、ネットワークを介してオンデマンドで利用できる共有リソースへの便利なアクセスを提供するモデルです。クラウドの利用により、企業や個人は物理的なハードウェアや管理作業から解放され、柔軟で拡張性のあるIT環境を享受できます。
この定義が中心となり、さらに以下の5つの特性、3つのサービスモデル、3つの展開モデルがNISTの定義における補完要素として説明されています。
1. クラウドコンピューティングの5つの特性
1. オンデマンドのセルフサービス
ユーザーは、管理者やプロバイダーと直接やり取りすることなく、必要なリソース(例:仮想マシンやストレージ)を自分で即座に取得・管理することができます。
- 例:AzureやAWSで仮想サーバーを自分で即座に作成可能。
2. 広範なネットワークアクセス
クラウドサービスは、インターネットを通じて多様なデバイス(PC、スマートフォン、タブレットなど)からアクセス可能です。場所を問わず、いつでも利用できるのが特徴です。
- 例:Microsoft 365やGoogle WorkspaceへのWebブラウザやスマホからのアクセス。
3. リソースの共有(マルチテナントモデル)
クラウドでは、同じ物理リソースを複数のユーザーで共有します。ユーザー間のデータは適切に隔離され、各ユーザーは独自の環境を持っているように見えます。
- 例:AWSのインフラを利用する複数の企業が、同じ物理サーバーを共有。
4. 迅速な弾力性(Elasticity)
クラウドは、ユーザーの需要に応じてリソースを自動的に増減させることができます。これにより、急なトラフィック増加にも対応可能です。
- 例:ECサイトのアクセスが急増した際に、自動的にサーバーが追加される。
5. 使用量に基づく計測(Measured Service)
クラウドは利用されたリソースの使用量を計測し、使用した分だけ課金されます。これにより、無駄なくコストを最適化できます。
- 例:Azureでのデータ転送量やストレージ容量に応じた課金。
2. クラウドの3つのサービスモデル
1. IaaS(Infrastructure as a Service)
仮想化されたインフラ(サーバー、ネットワーク、ストレージなど)を提供するモデルです。ユーザーはOSやアプリケーションの管理を行います。
- 例:Azure Virtual Machines、AWS EC2
- 用途:開発環境の構築、テスト、運用環境の拡張。
2. PaaS(Platform as a Service)
アプリケーションの開発・運用に必要なプラットフォームを提供するモデルです。ユーザーはアプリケーションの開発に集中でき、インフラ管理は不要です。
- 例:Azure App Service、Google App Engine
- 用途:Webアプリやモバイルアプリの迅速な開発。
3. SaaS(Software as a Service)
完成されたソフトウェアをインターネット経由で提供するモデルです。ユーザーはアプリケーションの機能を利用するだけで、管理は不要です。
- 例:Microsoft 365、Google Workspace
- 用途:メール、ドキュメント管理、オンライン会議。
3. クラウドの3つの展開モデル
1. パブリッククラウド(Public Cloud)
パブリッククラウドは、一般公開された共有インフラ上で提供されるクラウドサービスです。誰でも利用可能で、低コストで高い可用性を実現します。
- 例:Azure、AWS、Google Cloud
- 用途:スタートアップや中小企業がスケーラブルなIT環境を構築する場合。
2. プライベートクラウド(Private Cloud)
プライベートクラウドは、1つの組織専用に提供されるクラウド環境です。高いセキュリティが求められる企業に適しています。
- 例:VMwareを利用したオンプレミス環境
- 用途:金融機関や政府機関など、機密データを扱う場合。
3. ハイブリッドクラウド(Hybrid Cloud)
ハイブリッドクラウドは、パブリッククラウドとプライベートクラウドを組み合わせたモデルです。用途に応じてクラウド環境を柔軟に選択できます。
- 例:Azureを利用したオンプレミス環境とクラウドの統合
- 用途:一部のシステムはプライベートで運用し、その他はパブリッククラウドで処理。
まとめ
クラウドコンピューティングの5つの特性
- オンデマンドのセルフサービス: 管理者を介さず、必要なリソースを即座に取得。
- 広範なネットワークアクセス: 多様なデバイスからインターネット経由でアクセス可能。
- リソースの共有: 複数ユーザーが同じ物理リソースを使用し、データは隔離される。
- 迅速な弾力性(Elasticity): 需要に応じてリソースを自動的に増減。
- 使用量に基づく計測: 使用した分だけ課金され、コスト最適化が可能。
クラウドの3つのサービスモデル
- IaaS: 仮想インフラを提供。例:Azure Virtual Machines。
- PaaS: アプリ開発プラットフォーム。例:Azure App Service。
- SaaS: 完成されたソフトウェアを提供。例:Microsoft 365。
クラウドの3つの展開モデル
- パブリッククラウド: 一般公開の共有インフラ上で提供。例:Azure、AWS。
- プライベートクラウド: 1組織専用のクラウド環境。例:VMware。
- ハイブリッドクラウド: パブリックとプライベートを組み合わせたモデル。例:Azure。
これらのポイントを押さえ、クラウドの基本特性やサービスモデル、展開モデルの理解を深めましょう。試験対策としても、5つの特性や3つのモデルを整理して覚えておくことが重要です。